156番目のテーマ「創作話」

# VIVA LITERATURE

projects 156「ポンタと先生」

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https://scratch.mit.edu/projects/294594453

「ポンタと先生」

 そば屋さんの入口に、編み笠をかぶった信楽焼の大きなたぬきの置物が、お客さんを出迎えていました。

編み笠から覗いている、たぬきのまんまる目だまが、愛嬌たっぷりに、お客さんをさそいます。

「やあ、先生、おかえりなさい。」「お仕事、おつかれさま。」

「さあさあ、おいしいおそばが、できあがっているよ。」

と、まねきいれられました。

お店に入ると、たぬきの坊やのポンタが、たぬきそばを運んできました。

先生は、テーブルにおいてある七味唐とうがらしと小ねぎをいっぱいかけて、ゆっくりと食べました。

お腹いっぱいになると、先生は、やがて、夢の世界に入っていきました。

先生は、若い頃の楽しかった夢をいっぱいみました。

そして、ポンタに肩をやさしくたたかれて、目を覚ましました。そば代を支払い、

「ごちそうさまでした。」

と、先生は、店を出ました。外に出ると、置物のたぬきが、

「さよなら先生、身体に気を付けて、また来てくださいね。」

と、まんまるおなかをポコポンとたたいて、先生を見送りました。

 

⁂先生は、東京の谷町に住んでいました。先生は、谷町の老人から、明治時代に、はじめてできたトンネルのことを聞きました。そのトンネルが、「赤坂御所トンネル」だというのです。ここらに住んでいたたぬきは、トンネルを出入りする電車の警笛や車輪の音に、びくびくしていました。怖い動物が、攻めてきたと思いました。電車が来るたびに、電車に向かって、唸り声をあげて、威嚇しました。電車に、襲い掛かっていって、轢き殺された、たぬきもいました。近所の人は、「谷町のたぬきが鉄道往生した」と、噂しました。

 先生は、日曜日に、近くの教会に通っていました。

いつも朝日橋の上で、教会の牧師さんと、ポンタの祖先のたぬきの冥福を祈りました。

 

動物のお話 

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